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「あの……さ、入籍してるだけで夫婦じゃないって……」
「はい。もう話しましたよね?」
「そうだけど、その、あの……それってその……」
「ああ、してませんよ」
夜の営みの話だけど……え、してないの?
「そういうつもりで助けたんじゃないからって、1回もないです」
「でも私がそっちの家に行った時、男が上がり込んでると思ってもの凄い勢いで階段駆け上がってきたし、あの時ハグもしてたよね?」
「心配はしてくれますよ。ハグは泣いた時だけしてくれます。でも嘘泣きしてもちゃんと見破られちゃいます。私、子供だと思われてるんですよ」
マジかー!
「それか仁のタイプじゃないのかも。結構頑張ってるんですけど、全然女として見て貰えません。だから別れたいんでしょうね。死にそうだったから慌てて保護しちゃって後悔してるんじゃないですか?」
そう……なのかな。日菜ちゃんがタイプじゃない男なんているの?
タイプじゃなかったとしても一緒にいる間に好きにならない男なんているの?
って考えてたら、また日菜ちゃんが顔を近づけて来た。
「波美さんは、どんな人がタイプなんですか?」
「え、私? 私は……可愛い人かな。童顔で甘え上手で守ってあげたくなるような……」
「それって男性じゃなきゃダメですか?」
え、えーっ、日菜ちゃん、まさかどっちもいけるの!?
私はどうなんだろう。
私は……いけるか? いけそうか? 日菜ちゃんだったら――
「波美さん、何か音しません?」
「え?」
日菜ちゃんと一緒に耳を澄ませてみたら、確かに玄関の方で音が聞こえた。
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