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「違う違う、あのね――」
慌てて日菜ちゃんがここにいる理由を説明すると、母に笑われた。
「まあ、それはお世話になりました」
「いえ、こちらこそ波美さんにはお世話になってます」
そうなのって顔で母が私を見た。
「や……お世話っていうかあの……普通に仲良くご近所づきあいを……」
「へー。今時珍しいわね。ねえ、こっちに来てお土産食べない?」
いやー、すっかり忘れてた。
私、一時的に独り暮らしなだけで、母親と一緒に暮らしてたんだった。
母、忘れてごめん。それにしても――
「急に帰って来るなんて驚いたよ」
「急にって、メッセージ送ったわよ? リビングも波美の部屋も電気消えてるから、てっきりまだ帰って来てないんだと思ってた。私の方がびっくりよ」
「すみません……」
「ああ、後藤さんは謝らなくていいのよ。母親が帰るって連絡しても気付かないなんて薄情な娘でしょ。でも安心したわ。私がいなくても全然問題ないみたいね」
はい。案外平気でした。
「お婆ちゃん、治ったの?」
「うん、それはもう大分いいんだけど……ま、その話は後でね」
すると日菜ちゃんは椅子に座らず荷物を持った。
「お母さんがいらっしゃるなら安心だから、私もう帰ります」
「あらゆっくり……ああでも確かにもう遅いわね。すみませんね、こんな時間まで。これ、良かったら持って行って」
「わー綺麗なお菓子ですね、ありがとうございます。じゃあ波美さん、おやすみなさい」
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