77人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいのよ、もうとっくに離れて暮らしててもおかしくない年だしね」
うっ。
「この家はあなたにあげる。たまーに帰って来るけどね」
「……今日って、それを言う為に戻って来たの?」
「そうよ。あと、お父さんを連れに来たの」
母の視線の先に父の遺影。
久しぶりにちゃんと見たかも。確かに私より母の方が大事にしてくれるね。
それに死んだって言ってるけど、母にとっては父はまだ生きているのかもしれない。
もう母に大変な思いをさせることはなく微笑んでいるだけの父なら、ずっと一緒でも邪魔にならないだろうし。
「他の荷物は少しずつ取りに来るけど、多分半分以上使わないものだから置いといて。家族が増えて邪魔になったら喜んでまとめて整理しに来るから」
そんなこと当分ないと思ってそう。さっきの子と一緒に住むかもって言ったら驚くかな。
それからお土産を食べながら祖父母の話をした。日菜ちゃん達のことについて相談してみようかなと思ったけど、勝手に話したら私を信頼して話してくれたに違いない日菜ちゃんに悪いかもって思い留まった。
でも翌日――
「お帰り」
「お帰りなさい」
会社から帰って来たら、まだ母は家にいて、日菜ちゃんを招き入れていた。
「ただいま。お母さん帰るんじゃなかったの?」
「明日にしたわ。つい楽しくて。ねー日菜ちゃん」
「はい。昨日のお礼にお菓子をお裾分けしに来たんですけど、波美さんが帰って来るまでいればって言って頂いてお言葉に甘えてます」
「そうなんだ……」
楽しそうな笑顔。日菜ちゃん、話し相手になってくれれば私じゃなくても良かったのか。
最初のコメントを投稿しよう!