77人が本棚に入れています
本棚に追加
「アルバムとか見せて貰ってました」
開かれたページに中学生の私。
懐かしいなって覗き込んだら、その後ろに写っていた最近よく見る顔が目にとまった。
「……後藤くん?」
「そうなんですよ。結構色んな所にいました。同じ学校ですもんね」
運動会で走る後藤と、ボーッと応援してる私。あ、ここにもいた。ステージで発表してる後藤とそれを見ている私の後頭部。画像の中心にいるのは私だけど、どちらかというと主役は後藤。
これわざとじゃない? 友達を撮影するふりして後ろの芸能人狙うみたいな。
母は気付いているかしらと思っていたら、あっさり言われた。
「お父さん、仁くんのこと息子みたいに可愛がってたからね」
「え、隣の家の子勝手に連れ回してるの知ってたの?」
「勝手じゃないわよ。まあ最初の1回は後で知って私が謝りに行ったんだけど、別に構いません、ご自由にどうぞって言われたの。私には考えられないくらい放任主義で驚いたわ」
ああ、後藤を置いて移住しちゃったしね。
「お父さんに出掛けるなら波美も一緒に連れて行けばって言ったら、同級生の男女じゃ嫌がるだろうし、あいつはアウトドアに興味ないだろって言われたわ。自分の父親が娘を放置して隣の家の子と出掛けてるなんて知ったら嫌がるんじゃないって言っても、おまえが黙ってりゃバレないって。でも罪悪感はあったみたいね。堂々と仁くん狙ってる写真は流石にないわよ」
うーん、でもその方が本気っぽい。実の娘より他人の息子の方を愛してたんじゃないかと思ってしまう。
てか後藤、こうして見ると可愛いな。
周りの子より背が高くて大人顔の私と比べたら全然可愛い。あー、これは完敗だわ。
「でね、日菜ちゃんに私と一緒にウチ――ここじゃなくて私の実家にね、来てみないかって話してたの」
最初のコメントを投稿しよう!