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「ああそれは……この前冬真くんが私が眠っている間に携帯にスパイウェア仕組んだみたいだから、抗議に行ったの。あなたの命令じゃ――」
「知らない。具体的な被害は?」
「被害って程のことは……」
「そうか。良かったな」
あれ? 本当に知らないの?
「冬真はまだ仕事だ。君が怒ってたってことは伝えておく。他に何かあるか?」
あると言えば色々あるけど、何をどこまで話していいのやら……
「あの……日菜ちゃんの話だけど、会ってみないとわからないって言ってたけど、理想としてはどうなの? お互いの気持ちが変わっていなかったら、彼女と――」
「結婚したい。アイドルは引退する」
自分がプロポーズされたわけじゃないのにドキッとした。澄んだ目で真っ直ぐ見詰めて言われたから。
「引退なんて本当に出来るの? また彼女だけ傷つけることになったら――」
「じゃあ先に引退する。それならいいだろ」
「えっ、そんなこと私に決められな――ちょっ、ねえ!」
桜川陽、バイクで逃走。
早速事務所に直談判しに行ったのかしら?
どうしよう、私変なこと言っちゃったかな。
まあ彼の周りには沢山の人がいるはずだから、私が心配しなくても大丈夫でしょう。それより日菜ちゃんだ。早く帰って彼女に会わなきゃ。
急いで電車に乗って、自宅ではなく隣の後藤家へ。
インターホンを押したら後藤が出迎えてくれた。
「待ってたよ」
「ごめん、遅くなっちゃったけど日菜ちゃんは――」
「いるよ」
でも迎えに来てはくれないんだって靴を脱ごうとして気付いた。
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