7. そんなにあの子が大事なのか

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玄関に、男性の靴が2つ。 1つは後藤だろうけど、もう1つは誰? 冬真くん? それともまさか桜川陽!? でも通された部屋で、日菜ちゃんと一緒に立ち上がったのはどちらでもなかった。 「波美さん、お帰りなさい。心配かけてすみませんでした。あの……」 視線が隣の男性へ。初めて見る顔……だけど馴染みがあるような。 「はじめまして。森山です。姉が大変お世話になりまして、ありがとうございます」 あー、弟くん! え、秋田から上京して来たの……? でも早速座って話を聞いたら、そうじゃなかった。 弟くんは東京の大学に通っているらしい。地元じゃなくて東京で進学した理由の1つは日菜ちゃんを探す為だ。 「友人にも協力して貰ってたんですけど、その友人が発見してくれて、ようやく会えました」 それって冬真くん? 弟くんの友達だったのか! 「波美さんのお母さんが鎌倉に連れて行ってくれたから起きた奇跡です。波美さん、本当にありがとう」 いや……奇跡ではなくて、そのお友達のちょっとした犯罪行為のせいだよなんて言えない。その説明をするなら桜川陽の話は避けられないけれど、彼の話は日菜ちゃんと後藤が一緒にいる所では出来ない。 だってそんなことしたら―― 「本当にお世話になりました。ご挨拶出来て良かったです。では失礼します」 立ち上がって頭を下げる弟くん。 私に挨拶する為に待っていてくれたのか。それは申し訳なかったと思ったら、日菜ちゃんも一緒に立ち上がった。
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