7. そんなにあの子が大事なのか

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「波美さん、短い間でしたけどお世話になりました。波美さんに会えて本当に良かったです」 「え……日菜ちゃん?」 「3人で話し合って、私、弟と暮らすことになりました」 ああ……え、今から? 「私の方こそ、日菜ちゃんといて楽しかったよ。弟さんと再会出来て良かったね。でもあの……今すぐ弟さんの所へ行くの? 荷物とか――」 「もうまとめました。後藤さんにもあなたにも感謝していますが、姉をここに置いて帰ることは出来ません」 険しい顔で弟さんに制されてしまった。 そうか、後藤も私も完全には信用されてないんだ。 姉の弱みにつけこんで監禁していたと思われてもおかしくない状況だし、感謝より先に怒りや不信感を抱いて当然かも。 しっかりした弟さんだなと感心している間に、彼は日菜ちゃんを連れて玄関に向かった。 「では失礼します」 挨拶して背を向ける弟くん。 日菜ちゃんは俯いていて表情が見えない。 「姉貴、行くぞ」 弟くんに促された日菜ちゃんの足が玄関から一歩外へ。でも彼女は急に振り返って後藤に飛びついた。 「仁、私……私ね……」 何か言おうとしているけれど、泣いてしまって言葉にならない。なのに日菜ちゃんが本当に泣いている時は抱き締めるはずの後藤は、彼女に腕を回すこともなく黙っている。 ああもう、黙ってられない! 「森山さん、あのやっぱり今日は――」 「波美さん、ありがとう!」 びっくりした! 日菜ちゃんが後藤から離れて私に飛びついてきた。
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