7. そんなにあの子が大事なのか

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「もう大丈夫です。私、行きますね」 日菜ちゃんが、離れていく。 私から。 そして後藤から。 「あ、あの、何かあったら――何もなくても電話してね? これからも友達でいてね?」 必死で言葉を投げたけれど、日菜ちゃんは悲しげに微笑むだけで行ってしまった。それを呆然と見送っていたら後藤が喋った。 「一条も帰れよ」 「帰るけど、その前に教えて。3人でどんな話し合いをしたの?」 「どんなって……日菜が弟を連れて帰って来て、再会出来たから弟の所へ行くって言うから、それは良かったって……後は細かい手続きの話をしただけだ」 「手続きって、離婚のこと?」 「ああ。それに学校のこととか事務的な話だよ。全部彼がやるって言うから書類を渡した」 「後藤くんはそれで納得したの?」 「ああ。一条が納得出来ないって顔してるのが不思議だよ」 ――本当に? 涼しい顔をしているのが信じられなくて、顔を近づけてしまった。私と同じ高さにある後藤の顔。こんなにちゃんと見たのは初めてかも。地味な顔だけど、意外と整ってる。ずっと見てると綺麗に見えてくる。30代の男にしては艶やかな肌のせいかな。それに匂いだ。やっぱり後藤っていい匂いがする。 「でも疲れたし、もう帰ってくれないかな」 玄関に降りて、扉を開けられてしまった。 さっき日菜ちゃん達が出て行った扉。 まだ近くにいるかもと思ったけれど、もう彼女の姿は見えなかった。
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