8.続きは部屋で話そうよ

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そしてまた推しのいない生活が始まった。 桜川陽の話は結局日菜ちゃんに伝えられなかったけれど、それで良かったかも。 桜川陽ってあの見た目でちょっと強引なのはカッコイイけど、夫としてはどうかと思う。アイドル引退するとか言ってたけど、それって世の中甘く見てない? アイドル辞めて結婚して、どんな生活するつもりかしら。 日菜ちゃんはまだ若いし、あんなに可愛くて良い子なんだから、他にもっといい相手いるよね。再婚したら結婚式に呼んでくれるかな。 その前にお前が結婚しろってか。 あーあ。 うん? 隣の部署の人が、こっちを覗き込んで何か話してる。 あの人達、さっきすれ違い様に私の顔見てたよね。 「田中さん、私、どこかにゴミとかシールとかついてたりします?」 「えっ……別に何もついてないけど、どうかした?」 「ああいえ、なら大丈夫です」 やっぱり気のせいかって思いながら仕事を終えて会社を出た瞬間、はっきり聞こえた。 「あ、アレじゃない?」 「えー、ただのオバサンじゃん」 は? 私のこと言ってる? 振り向いたら女子高生が2人。 「調子に乗るなババア!」 いきなり乱暴な言葉を投げつけて走り去った。 えー……? 「調子に乗ってるのはそっちだろガキって言い返さないの?」 後ろから囁かれてビクッとして振り向いたら、写真で見た黒髪美少女が立っていた。 「冬――あなたねえ……!」
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