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そしてまた推しのいない生活が始まった。
桜川陽の話は結局日菜ちゃんに伝えられなかったけれど、それで良かったかも。
桜川陽ってあの見た目でちょっと強引なのはカッコイイけど、夫としてはどうかと思う。アイドル引退するとか言ってたけど、それって世の中甘く見てない? アイドル辞めて結婚して、どんな生活するつもりかしら。
日菜ちゃんはまだ若いし、あんなに可愛くて良い子なんだから、他にもっといい相手いるよね。再婚したら結婚式に呼んでくれるかな。
その前にお前が結婚しろってか。
あーあ。
うん?
隣の部署の人が、こっちを覗き込んで何か話してる。
あの人達、さっきすれ違い様に私の顔見てたよね。
「田中さん、私、どこかにゴミとかシールとかついてたりします?」
「えっ……別に何もついてないけど、どうかした?」
「ああいえ、なら大丈夫です」
やっぱり気のせいかって思いながら仕事を終えて会社を出た瞬間、はっきり聞こえた。
「あ、アレじゃない?」
「えー、ただのオバサンじゃん」
は? 私のこと言ってる?
振り向いたら女子高生が2人。
「調子に乗るなババア!」
いきなり乱暴な言葉を投げつけて走り去った。
えー……?
「調子に乗ってるのはそっちだろガキって言い返さないの?」
後ろから囁かれてビクッとして振り向いたら、写真で見た黒髪美少女が立っていた。
「冬――あなたねえ……!」
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