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ああ、そういう……え、でも……
「あなた本当に彼の奴隷なの? あなたが日菜ちゃんと会ってたこと、彼知らないみたいだったけど?」
「だって……言えないでしょ。日菜が助けて貰った男と暮らしてたなんて。波美さんだって知ってるくせに黙ってたんでしょ?」
「え、まあ……」
ところで日菜って呼び捨てなのって思ったら、冬真くんは弟くんの友達というより日菜ちゃん姉弟の幼馴染みだった。そしてアイドルを辞めた日菜ちゃんがしばらく身を隠すけれど心配しないでとだけ言い残して失踪したと聞いてじっとしていられなくて、東京に来てしまったらしい。
「で、とりあえず桜川陽に文句言ってやろうと思って事務所の近くまで行ったんだけど迷っちゃって、そしたら事務所の人の方が僕を見つけて声掛けてきた。自分もアイドルになろうなんて考えてなかったけど、そしたら東京に住めるし確かに僕の天職かもって即決断したよ。事務所の寮に入って芸能活動しやすい高校に通うってことで両親も快諾してくれた」
そして冬真くんは事務所の寮に入ったけれど、アイドルの下積み生活は想像以上にハードで、日菜ちゃんを探す余裕なんてなかった。結局何の手がかりもつかめない内に大学に合格した弟くんが上京してきて日菜ちゃんを探し始めたので、自分はもう秋田に帰ろうかと悩み始めた頃、初めて桜川陽に会ったらしい。
「事務所の他の先輩たちはメイクして衣装着てないと大したことないって思ってたけど、陽は違った。スッピンでジャージ着ててもオーラがあった」
わかる。ヘルメットで顔見えなくてもイケメンオーラダダ漏れだったもん。
「僕もアイドルになったから陽の方の事情もなんとなくわかったし、もう責める気にはなれなかった。それより日菜が身を滅ぼす程夢中になったことに納得しちゃった。だから僕はあなたに会うためにここに来ましたとだけ伝えたんだ」
後輩からの告白に慣れていた桜川陽は驚きも喜びもせず、じっと冬真くんを見詰めて何処から来たと尋ねた。そして冬真くんが角館と答えると、あのマンションの部屋に連れて行った。
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