8.続きは部屋で話そうよ

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「で、日菜を探しに来たけどレッスンはキツいし寮生活は窮屈だし、もう地元に帰ろうかと悩んでるってぶっちゃけたら、俺の指示に従うならここで暮らしていいって言われたんだ」 「それで一緒に日菜ちゃんを探してたの? 弟さんは?」 「あの2人は会わせてない。どんな事情があったとしても陽が日菜を傷つけたのは事実だし、理解し合うのは難しいでしょ」 確かに。姉は叩かれて引退して失踪までしてるのに相手はテレビに出続けてるなんて凄いムカつくよね。 「でもこのまま陽に黙ってたらヤバいことになるかも」 どうやら桜川陽は、日菜ちゃんとの熱愛発覚直後に事務所と話し合い、その時点で交際を認めてしまうとメンバーやスタッフに迷惑を掛けるだけでなく日菜ちゃんを更に追い込む危険があると納得して沈黙する代わりに彼が所属しているアイドルユニット、スプリングの10周年以降は好きにさせて貰うと宣言したらしい。 「10周年っていつなの?」 「記念日まであと2か月。サマーと合同の10周年記念ライブのチケットはもうソールドアウトしてるよ」 「2か月!? そこで爆弾発言するってこと?」 「かもね。今日で引退しますとか」 「でもそれってもう事務所には通告したのよね?」 「陽はそのつもりだろうけど、多分口約束というか事務所の方は忘れてるんじゃないかな。マネージャーも3年前とは別の人だしね」 「じゃあ大騒ぎになるかもね」 大変だろうなとは思うけど、どれ程の損害になるのかわからないから淡々と答えたら、冬真くんに肩を掴まれた。 「ねえ、他人事じゃないよ? 波美さん、陽の彼女だと思われてるから、陽が引退宣言したら波美さんのせいだと思われるかもよ?」 うおー、そうだった! でも―― 「いいんじゃない? そうしたらまた日菜ちゃんが責められることはないでしょ」 「え……いいの?」 「私は有名人じゃないし、炎上するようなSNSもないし、本当の彼女じゃないんだから勝手に誤解して責められたとしても大した被害はないでしょ」
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