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『何だ?』
うっ、画面越しでも目力強。
「あの……日菜ちゃんのことだけど……」
桜川陽は更に目力アップして、黙って聞いてる。
「彼女、元気です。助けてくれる人達もいるし、桜川さんが心配しなくても大丈夫だと思います。むしろそっとしておいてあげた方が……」
『嫌だ』
鋭い言葉が耳に刺さった。
『俺は、ただ優しいだけの男になるつもりはない』
「えっ、あの――」
『安心しろ。危害を加えたりはしない。多分な』
えー、多分!?
「ちょっ、あの桜川さ――」
うわっ、切られた。
「ダメかあ。まあそうだよね。やると決めたらやる男だから、陽は。日菜の周囲も、ウチの事務所も荒れるかも」
「そんなー、え、冬真くんなんで落ち着いてるの? さっきまで私より心配してたでしょ?」
「うん。でも陽の覚悟を確認出来たから、もう心配するの止めた。陽は既に色んなケースを想定済だと思う。その上で日菜に会おうとしてるんだから、もう止められないよ。嵐に備えて出来る限り準備するだけだ。さ、もう寝よう。おやすみー」
冬真くんは、奥のベッドを選んで布団の中へ。
まあ確かに今色々心配した所で何も出来ないし、私も寝るかって布団に入ったけど……
眠れない。
さっきの桜川陽の顔とか、日菜ちゃんの顔とか、後藤の顔が浮かんで来て、頭の中でグルグル回ってしまう。すると暗闇の中で冬真くんがつぶやいた。
「眠れないね」
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