8.続きは部屋で話そうよ

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「ご確認」とか「ご請求」とか曖昧な件名で、差出人がよくわからない。迷惑メールかな。万が一取引先だったら読まずに削除してはマズイので、一応開いてみたら背筋が凍った。 『桜川陽の性処理ありがとうございます。しかし御社はあのような副業を認めているのでしょうか。御社のイメージを汚す行為ですので、速やかに退職して下さい』 恐怖で鼓動が早くなる。 他のメールを確認してみたら、全部酷い暴言だった。 便器のクセに堂々とデートするなとか、死ねとか。 呆然と画面を眺めていたら、後ろから声を掛けられた。 「大分噂広まってるみたいね」 「ああ田中さん、おはようございます、あの――」 「お昼に外で話そう」 田中さんがいてくれて良かったと感謝してメールを閉じて仕事を始めたけれど、気のせいか周りの人から避けられてるみたいで、仕事が上手く進まない。やっとお昼になって外に出て、テーブルを挟んで田中さんと2人になってホッとしていると、思ってもみなかったことを聞かれた。 「一条さんって、昔アイドルやってたの?」 何も口に入れてなくて良かった。何か入ってたら田中さんに向かって吹き出してたかも。 「そんなわけないじゃないですか。どうしてそんな――」 「ウチに来た時、元アイドルの子の心配してたじゃない? あれが自分の心配だったとすれば辻褄があうもの。だけどびっくりよ。その相手の男性芸能人っていうのが桜川陽だったなんて」 あの時は桜川陽の名前は出さずに某芸能人とだけ伝えたけれど、それでも話すべきじゃなかった。どうしよう、桜川陽と会ったことはもうドルオタくんが言いふらしてるみたいだし―― 「あああの、桜川さんなのはそうですけど――」
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