77人が本棚に入れています
本棚に追加
それから田中さんは、必要最低限の会話しかしてくれなくなった。それも真顔で敬語。他の女性社員からも避けられてる。そして男性社員は――
「一条さんって頼めばやらせてくれるってほんと?」
多分、私が桜川陽と関係したと思い込んでいる女性が流した噂。
私の価値と、桜川陽との行為の価値を下げたくて流してる噂。
でも当たってるかも。
桜川陽とはしてないけど、夏目涼とも冬真くんとも断れずにやっちゃったもの。
今もしてるし。
「ったく近所で普通に食事も出来ないなんて不自由過ぎるよ」
「だからってあの恰好はないでしょ」
仕事を終えて会社を出たら、サングラスを掛けた金髪の大女が立っていて、避けて駅に向かおうとしたら声を掛けられた。
「俺だよ」
まあ欧米ならいるかもってギリギリの女装をした夏目涼。派手な車に乗せられて、個室のある店で食事した後、知らないマンションへ。この前教えて貰った冬真くんのアドレスに、夏目涼が住んでる所がファンにバレてるみたいだからあなたも気を付けてって連絡したら、彼にも話が伝わってすぐに引っ越したみたい。
前の部屋より景色がいいねって褒めたら、ベッドも前より寝心地いいよって引きずり込まれた。そして手際よく速攻で私の中に入って来てかき乱しながら囁く。
「波美もここ……ああ……に住んだら?」
「私、家事……ん……苦手よ?」
「そんなのっ、うっ、しなくていいよ」
妻になるわけじゃないんだから、か。
「他のメンバーも同棲とかしてるの?」
「まあ……皆適当にやってるよ」
最初のコメントを投稿しよう!