77人が本棚に入れています
本棚に追加
相手のマンションに通うのと、同じマンションで待つのって違うよね。待ち続けたらずっとそこにいたくなって、妻になりたいって思ってしまいそう。
それが叶わず別れても、愛していたらやりきったって思えるかもしれない。
どうしようもなく傷ついても、若ければ立ち直れるかもしれない。
でも成り行きまかせでここにいるだけの31歳の私には無理だ。
なんてことを考えている間に、夏目涼は私の中から出て行った。
「あなた達のグループ、もうすぐ10周年なんですって?」
「ああ。あっという間だったな」
そう言えば、この人何歳なんだろう。
「いくつでデビューしたの?」
「俺遅かったよ。21」
「え、じゃあ今31?」
「そんなに驚く? なんだこいつオッサンだったのかよって?」
そんなに若く見えてたわけじゃないけど、てっきり20代後半だと思ってた。
なんだタメか。急に親近感。
「まあ俺もこんな年までアイドルやってるとは思わなかったけどな」
「アイドル辞めたいって思ってるの?」
「いやー、まだ辞められないよ。もっと頑張れって応援してくれてるファンがいるからね。俺ももうちょっと上に行ってみたいし」
そっか。逆に桜川陽は、もう上を目指すより日菜ちゃんの隣に行きたいのかな。
「波美は今の会社何年目?」
「新卒で入ったから……って年バレるじゃない」
「って言うってことはタメか年上なんだ」
しまった、正解。
「別にいいじゃん、俺年下苦手だし。なんかこうキラキラした目で見上げられると、プレッシャーで萎える。傷つけないように嫌われないように気を遣うの疲れるし。挙げ句に結局捨てられる。若い子は飽きっぽいからな。昨日まで大好きって言ってた子が何もしてないのに推し変しましたとかさ。わざわざ公言すんなっての」
最初のコメントを投稿しよう!