9.無理しなくていい

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「でもずっと応援してくれる子もいるでしょ? ウチの会社にデビュー前からあなたのこと応援してるっていう人いるよ」 「それマジ嬉しい! どんな人?」 「えっと……明るくて親切な人よ」 「つまりいい女ってことだよな。波美と仲良いんだ?」 「うんまあ……お世話になってる先輩」 最近ちょっと冷たいけどね。 「ねえファンは抱かないって言うけど、そういう人に頼まれても抱かないの?」 「そんなの余計無理。絶対嫌われたくないもん」 セックス下手なの自覚あるんだ。 「ふーん、私には嫌われてもいいのね」 「嫌われる心配ないだろ。まだ好きになって貰えてないんだから」 まだって。そのうち嫌でも好きになるとでも思ってるの? 「私、そろそろ帰るわ」 「え、帰るの? じゃあ送るよ」 「いいよ、一緒にいる所見られたらマズイでしょ。大事な10周年記念ライブがあるんだし」 「だからこそだよ。波美に何かあったらライブどころじゃなくなる」 えっ、やだドキッとした。 「ちょっと待ってね、私も支度するう」 勝手に帰るより従った方が安全かもって、また女装した夏目涼の車に乗ってマンションを出た。 「駅まででいいわよ」 「家まで送ったら迷惑? じゃあウチの最寄り駅でも波美んちの最寄り駅でもない駅にしよう。何処がいい?」 適当な駅を告げると、夏目涼は頷いて尋ねた。 「ところで次いつ会える? つかそろそろ連絡先教えてよ」 え……どうしよう。
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