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「夕飯、仕込んでから出掛けてるんだね」
「毎日じゃないよ。これは寝かせた方が美味いから」
艶やかなご飯の上に胡麻だれを纏った鯛を並べて胡麻と刻み海苔と三つ葉と……ぶぶあられもある。あの小さくて丸くてカリカリのやつ。
「鯛少なめだけど、まあ漬け物もあるから」
そう言いながら運んで来たお盆の上には、茶碗と急須と漬け物の小皿。
「ごめんね、鯛貰っちゃって。漬け物も自家製?」
「うん」
ありがたくて思わず合掌。
「いただきます」
だし汁を掛けて、薬味と共に鯛で包んだご飯を頂く。
うっまーい。てかこの味――
「なんか懐かしい、昔たまに父が作ってくれたんだよね」
「ああ。親父さんに教わった」
えっ、妻にも教えなかったレシピを隣の家の子に!?
「娘が喜んで食べてくれるから絶対妻には教えない、ウチでは俺が作るんだって……ああごめん」
やだ、涙。
「私こそごめん、ああ大丈夫、もう……うん、止まった。でもいつそんな話したの?」
「一緒に釣りに行った時に魚好きかって聞かれて、お寿司以外はあんまり好きじゃないって答えたら茶漬けも美味いぞって教えてくれた」
「そうなんだ。釣りでウチの父と仲良くなったの?」
「いや。釣りも親父さんに教えて貰った」
「え、じゃあ……バイクとか?」
首を振ってしばらく黙ってから、後藤は答えた。
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