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久しぶりに優しく話しかけられて、すぐには返事が出来なかった。
「あの子が元アイドルのお友達ね。信じなくてごめん」
「い、いえ、あの……」
田中さんは、ポンと背中を叩いて微笑んでくれた。あーこの感じ、久しぶり。給湯室で準備していたら他の女子社員もやって来た。
「一条さん、あの子ってもしかして昔桜川陽と噂になったアイドル?」
「はい。今は一般人ですけど」
「へー、随分印象変わったけどすっごく綺麗ね」
アイドルの頃からだけでなく、私が知ってる日菜ちゃんからも印象が変わってた。
髪を切って少し大人っぽい服装で、アイドルというより女子アナって感じ。ひたすら可愛いというより美人さんだねーって感じ。
お茶を持って戻ると、男性社員だけでなく女性社員までほぼ全員陥落させた日菜ちゃんが駆け寄って来てくれた。
「波美さんが元気ないって聞いて心配で来ちゃいました。大丈夫ですか? これ食べられます?」
ピンクのチョコでコーティングされた可愛いお菓子を差し出して、ニッコリ笑う日菜ちゃん。あー癒されるー。
すっかりメロメロの部長に使っていいよと言われたので、2人で応接室へ。
「波美さん、こんな大きな会社にお勤めなんですね。皆さん優しい方ばかりだし」
いやーまあーうん……イジメもあの程度なら優しいかもね。
「昔よく握手会にいらしてくれた方にも会えました。声掛けたらびっくりされちゃったけど、親切に案内して貰えて良かったです」
へー、認識されてて良かったね、ドルオタくん。
「来てくれてありがとう。私がここに勤めてるって誰から聞いたの?」
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