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「冬真から聞きました。陽が私を探していて波美さんにもご迷惑を掛けたみたいで申し訳ありません」
ああ、冬真くんから聞いたのか。冬真くんなら余計なことは話してないよね。
「でももう大丈夫です。私、逃げるの止めますから」
「え、日菜ちゃん――」
「これから彼と会ってきます。だからもう私の盾になるなんて危ないことしちゃダメですよ。お茶美味しかったです、ご馳走様でした」
「え、もう行くの? じゃあ下まで――」
「独りで帰れます。波美さん、お仕事頑張って下さいね」
そして日菜ちゃんはドルオタくんに手を振って、皆に笑顔で頭を下げて帰って行った。それを見送った後、トイレに駆け込んで冬真くんにメッセージを送った。
『日菜ちゃんがウチの会社に来て、これから彼に会うって出て行ったけど大丈夫かな?』
ダメだ、冬真くんも仕事中なのか返事が来ない。
諦めて席に戻ったらドルオタくんがやって来た。
「一条さん、最近彼女と友達になったんだって? てっきり落ちぶれてると思ってたけど、前より自信に満ちて輝いてて感動したよ。なんかあれだな、俺も頑張らないと」
うんうんと独り頷いて、ドルオタくんは戻って行った。
確かに日菜ちゃん、自信に満ちていた。
迷いのない真っ直ぐな目がキラキラ輝いて、綺麗なだけじゃなくて強そうに見えた。
今の彼女ならきっと大丈夫。
彼女を信じて、私は仕事に戻った。
田中さんも他の女子達も元通り接してくれるようになって、こんなに簡単に態度一変させるんじゃまたいつ掌返されるかわからないなって不安は残るけど、まあホッとした。
ありがとう、日菜ちゃん。
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