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謝って恐る恐る顔を上げて見ると、後藤はまだ困った顔をしていた。
「ごめん、やっぱり一緒に焼肉とか無理だよね、待ってて今肉分けて――」
「ご飯はある?」
「冷凍したのがあるよ」
「それは取っておけよ。俺炊いたから持ってくる」
――オッケーってこと?
突き出されたレジ袋を受け取ると後藤は自分の家に戻って行った。
どうしよう、音楽掛けようか。
後藤の好きな音楽なんてまるで見当がつかない。流行りの曲かけておけばいいかなって最新ヒット曲のプレイリストを選んで流し始めたら、ご飯を入れたタッパーとマイ茶碗とマイ箸を手に後藤が再びやって来てくれた。
「じゃあ始めましょうか」
「ああ」
私が肉や野菜を並べる間、後藤は黙ってじっとしていた。親が準備してくれるのを待つ子供の様に。
「あんまり家で焼肉とかしない? ああ、今独りだし、しないよね」
「昔からしない。ウチ、鉄板ないよ」
うわあ、やってしまった! 後藤の家ってなんか色々訳ありだった!
謝ったら余計傷つけそうで焦っていたら、後藤は淡々と続けた。
「学生の頃、先輩の家では時々食べたよ。その人はこだわりがあって、弄ると叱られるから焼いてくれるの待ってた」
ああ、なるほど、そういう……
「先輩ってサークルの? 後藤くんって学生時代何やってたの?」
「水泳」
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