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そしてライブ当日。
協力して仕事を終えると、田中さんと一緒に会場に向かった。彼女と別れて関係者の受付に行こうとすると、ペンライトを渡された。過去のライブのペンライトかなと思ったけれど、「10th ANNIVERSARY」という文字がプリントされていた。
「え、いつの間に……ありがとうございます。おいくらですか?」
「いいよ、私色々誤解して一条さんに辛い思いさせちゃったからさ」
「え、それはもう――」
「本当にいいって。ライブ楽しんで、明日いっぱい感想語り合おうね」
行っちゃった。
あー、まだ重大な隠し事をしている身としては胸が痛い。
そして本当に関係者で通用するのかなと半信半疑で受付に行ってみると、ちゃんと席に案内して貰えた。でも私浮いてるんじゃないかしらってソワソワしたけれど、会場はすぐに暗くなった。
巨大スクリーンに10年前の日付。
当時の映像が映し出される。おっ、出たイメチェン前の金髪夏目涼!
1年、2年と時が進んで、私が知らない彼等が映し出される。そしてついに今年の西暦の数字だけが映し出された直後に暗転して、再び明るくなったステージには現実の彼等が立っていた。
キャーアーアーアーって、もの凄い歓声。
でも関係者席は静かだ。
もう少し盛り上がってもいいんじゃないのって思うけど、歓声の上げ方がわからなくて黙ってる私も同罪か。
黙ったままステージに目をこらす。
いた、夏目涼!
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