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その週末、会社帰りに元彼と偶然再会した。
私が見つけたわけでも、彼の方が気付いてくれたわけでもない。
近付いて声を掛けてきたのは、大学の後輩の女子だった。
「波美さんですよね!? 全然お変わりないですね。お久しぶりです」
わかりますかって自己紹介されたけど、覚えてた。髪型と化粧が変わっても、特徴的な可愛らしい声は忘れられない。この子がいるってことはもしかしてって彼女の後ろを見たら、やっぱり元彼がいた。
「久しぶり」
「うん……久しぶり」
急いでるふりして逃げるのもなんか惨めで、立ち止まったままでいたら彼女が尋ねた。
「波美さんこの辺りにお勤めなんですか?」
「うん、まあ……」
「えー凄い。私達これから打ち合わせなんです。私達……」
笑顔で彼の腕を掴んで、彼女は宣言した。
「結婚するんです」
多分彼女は私が彼と付き合っていたことを知らない。だからきっと悪気はないのだ。
悪気はなく――当然祝ってくれますよねって顔で返事を待たれてしまった。
「そうなんだ。おめでとう」
そう言うしかないから、彼女だけ見詰めてそう答えた。
「波美さんは……波美さん、本当に変わらないですね。ねー、同じ年には見えないよ」
って、視線を促されてつい同じ年の男を見てしまったら、言われた。
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