10.感動しちゃった

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夏目涼はサマーから卒業するメンバー2人と残るメンバー2人に両腕を回して続けた。 「だから話し合って、ちょっと……いや結構激しかったか、喧嘩もして……グループでは出来ないことに挑戦したいっていうこいつらの気持ちと、まだグループで頑張りたいってこいつらの気持ち、どっちも尊重しようって決めました」 フォーシーズンズとして活動を続けるスプリングのメンバーの1人は、引退するメンバーの肩を抱いて言った。 「こいつはずっと頑張ってきました。休んだらまた頑張れるんじゃないかって提案したんですけど、休んでいると他のメンバーの負担になるのが辛いって言うんです。だから頑張り過ぎずにゆっくり歩いて行ける別の道を探すことになりました。俺もこいつがいなくなるのはスゲー寂しいけど、どうか応援してやって下さい」 スクリーンには涙を浮かべて抱き合う2人。 彼の名前を書いた団扇を持った子達も泣きながら応援するよって叫んだ。 「ありがとうございます。こんな僕を今までずっと応援して下さり本当にありがとうございました」 泣きながら深々と頭を下げる。 そんな彼を慰めようとして一緒に泣いてしまうメンバー。 でも桜川陽は泣いていない。 真っ直ぐ顔を上げて、会場を見渡す。 「スプリングの一員として皆さんと共に過ごした時間は宝物です。決して忘れません。忘れられるわけがありません。その時間は俺達の一部です。それがあったから今の俺達があります。俺達を育ててくれて、ありがとうございました」 サマーから脱退する2人と共に頭を下げる。 それでもやっぱり泣かな――あ、スクリーンで見ると若干瞳が濡れてるかな? ってあれ? 夏目涼、号泣してる!? 「なんでお前がそんなに泣くんだよ」 「だって……さ……やっぱ……寂し……」
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