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窓を閉めていつものように支度して、出社すると田中さんが待ち構えていた。
「一条さん、おはよう。昨日凄かったね」
「おはようございます。そうですね、色々驚きました」
少し気難しい上司の視線を感じて、お昼に話そうって仕事開始。
昼休みにダッシュで会社から少し離れたカフェに入ると、田中さんはすぐに語り出して止まらなかった。
「涼が残ってくれて本当に良かったわ」
「でも卒業する3人も芸能活動は続けるんですよね?」
「そうだけど、俳優業がメインになったりするでしょ? 私が好きなのはアイドルの夏目涼だからさ」
なるほど……。
「まあ新しく入った子達より一回り年上だし、フォーシーズンズが軌道に乗ったら卒業だろうなって心の準備は始めるけどね」
「今回卒業発表したメンバーの推しは突然で驚いたでしょうね」
「まあ重大発表って聞いて覚悟はしてたんじゃないかな。陽は以前から役者としてもっと頑張りたいって話してたし、サマーの2人はつい最近女性アイドルとの合コンスクープされてたし」
そうなんだ。
「ところで一条さんはどうなの? 桜川陽はいなくなっちゃうけど、他に誰か気に入った?」
夏目涼――とは言えない。冬真くんの名前もちょっと……
「ああ……皆カッコイイし目移りしてしまって……」
「じゃあ一緒にフォーシーズンズ、箱推ししていこうよ」
「そうですね……田中さんは、新メンバーが入っても推し変しませんか?」
「するわけないじゃない。私は涼一筋。昨日のライブで益々好きになっちゃった」
涼一筋か。
あー、胸が痛い。
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