11.体だけでいいから

4/17
前へ
/293ページ
次へ
でも約束したし、仕事を終えると夏目涼に会いに行った。 会ってきちんと、自分の気持ちを伝える為に。 「お仕事お疲れ様、準備出来てるから早く上がって」 おおっ、このスパイシーな香りは! 「えっ、これ手作り?」 「うん、巻きで仕事が終わったから久しぶりに本場仕込みのカレー作ってみた」 昔番組の企画でインドに長期滞在したことがあって、その時に現地の人に教えて貰ったというチキンカレー。匂いも見た目も本格的。 「いただきます……うん、美味しい!」 「だろ? ナンもラッシーも手作りだよ」 「サラダも?」 「うん。だってこれ切って和えただけだよ」 「でも爽やかなのに複雑な味っていうか……」 「ああ、スパイス入ってるからね。カチュンバルっていうインドのサラダだよ」 「へー……」 凄いなあ。いつも外食だったけど料理出来たのね。 簡単だよって作り方を説明されたけれど、夏目涼との思い出になるこのサラダを今後作ることはないだろうから笑顔で聞き流してしまった。 「実はさ、昨日色々発表して注目浴びてるから、しばらく気を付けろって言われてて、今日2人で外出禁止なんだ。男装させてもダメだって」 やっぱりそうなのか。帰りも気を付けなきゃ。 「ねえねえ、ところで昨日の俺どうだった?」 「ああ、凄かったよ。私ああいうライブ観るの初めてだったから驚いたわ」 「それライブの感想。俺について言及してよ」 面と向かって褒めてくれってこと?  もうこのタイミングで全部言ってしまおうか。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加