プロローグ

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小さな頃から大きな子だった。背の順ではずーっと一番後ろ。 波美(なみ)ちゃんママみたいってよく言われて、だよねーって受け入れてごっこ遊びでは不動のママポジション。あ、いや、パパもやってたな。人はちょっとの差だと嫉妬するけど、どうにもならない差は諦めるもので、小さくて可愛い女の子たちをただ微笑ましく見守って生きてきた。 ないものねだりで、私は可愛い子が大好き。 男子も、カッコイイより可愛い派。ちょっと中性的で可愛らしいイケメン俳優が大好き。 だったらアイドルも好きでしょって思うだろうけど、それはまたちょっと違うというか――アイドルを好きな女の子たちと自分が馴染まないというか――なんとなく避けてきた。 だけど今、私は男性アイドルグループのライブ会場にいる。 行っていいのか随分迷ったけど。 迷った理由は3つ。 1つ、ファンではないし彼等の曲をよく知らない。 2つ、彼等が登場したり素敵なパフォーマンスを見せてくれても、私にはあの「キャー」って声が出せないし盛り上がり方がよくわからない。 そして3つ。これが一番の問題だ。 私は今ステージ中央で歓声を浴びながら踊っているあの男が、女のどこに興奮してどのように指や舌や腰を使うのか、この体で知っている。 こうして彼を見ていると、自分でも信じられなくなるし、全然別人なんじゃないかと思えてくるけど。 なんでそんなことになったのか、最初のきっかけは……ああ、あの日かな。
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