11.体だけでいいから

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ちゃんと付き合ってくれって言われたわけじゃないし、セフレかもしれないしって誤魔化してきたけれど、彼が真っ直ぐ見てくれてるのはわかってたくせに。 ごめん、涼。 「好きな人が出来たの」 しばらく黙って考えて、彼は俯いたまま尋ねた。 「いつの間にそんな人と出会ったの?」 「うん……ずっと前から知り合いだったんだけど、最近急に気になりだして……あなたといても頭から離れないの」 「ふーん、俺はそいつに負けたんだ。そいつのどこがいいの?」 「どこって……なんか放って置けないのよ」 「母性本能くすぐるタイプってやつか」 「うん……母性かどうかはわからないけれど、本能的な何かを揺さぶられる感じかな」 「なるほどね。それは計算じゃ勝てないわけだ」 計算? 「俺、見た目がいいから第一印象高得点からスタートするだろ? そこから可算は難しくて、恋愛のカーブがどうしても下り坂になりがちなわけ。だからカフェで波美と再会した時に、これはチャンスだって思った。あの時点での俺の評価、最低だっただろ? よっしゃここからなら簡単に這い上がれるって」 そうね。だって出会った時にあなたがしたことって…… 「最低っていうかあれは……犯罪行為よ?」 「やっぱそうなっちゃう? でもあの状況で興奮するなって方が難しいぜ?」 寝室でほぼ裸で2人きりだったものね。それで手を出されないのもちょっと悲しいかも。 「流石に初期値が低すぎたか。昨日のライブで爆上げ狙ったんだけどな」 夏目涼は、溜息をついて顔を上げた。 悲しそうな微笑が、私の胸をキュッと握る。
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