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ちゃんと付き合ってくれって言われたわけじゃないし、セフレかもしれないしって誤魔化してきたけれど、彼が真っ直ぐ見てくれてるのはわかってたくせに。
ごめん、涼。
「好きな人が出来たの」
しばらく黙って考えて、彼は俯いたまま尋ねた。
「いつの間にそんな人と出会ったの?」
「うん……ずっと前から知り合いだったんだけど、最近急に気になりだして……あなたといても頭から離れないの」
「ふーん、俺はそいつに負けたんだ。そいつのどこがいいの?」
「どこって……なんか放って置けないのよ」
「母性本能くすぐるタイプってやつか」
「うん……母性かどうかはわからないけれど、本能的な何かを揺さぶられる感じかな」
「なるほどね。それは計算じゃ勝てないわけだ」
計算?
「俺、見た目がいいから第一印象高得点からスタートするだろ? そこから可算は難しくて、恋愛のカーブがどうしても下り坂になりがちなわけ。だからカフェで波美と再会した時に、これはチャンスだって思った。あの時点での俺の評価、最低だっただろ? よっしゃここからなら簡単に這い上がれるって」
そうね。だって出会った時にあなたがしたことって……
「最低っていうかあれは……犯罪行為よ?」
「やっぱそうなっちゃう? でもあの状況で興奮するなって方が難しいぜ?」
寝室でほぼ裸で2人きりだったものね。それで手を出されないのもちょっと悲しいかも。
「流石に初期値が低すぎたか。昨日のライブで爆上げ狙ったんだけどな」
夏目涼は、溜息をついて顔を上げた。
悲しそうな微笑が、私の胸をキュッと握る。
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