11.体だけでいいから

12/17
前へ
/293ページ
次へ
「今の会社の社長、同じアイドルグループのメンバーだった仲間なんですよ。仕事探してて起業した彼女の写真見つけた時は本当に嬉しくて、直接凄いねって言いたくて会社に電話したんです。そしたらそっちは今何してるのって話になって、就職先探してるって言ったらウチにおいでよって……はい、これ私の名刺です」 信号待ちで名刺を差し出された。おおー、森山日菜って書いてある。 「そうだったのね。元々仲良しだったメンバーなの?」 「仲良しっていうか……他のメンバーもそうですけど、友達とは違うし、家族の方が近いけどある意味それ以上っていうか……特別な存在ですよ。陽と涼さんもそうなんじゃないですか」 涼。名前を聞いたら、別れたばかりの彼の顔を思い浮かべてしまった。 すると日菜ちゃんが言った。 「波美さん、涼さんと付き合ってたんですね。今日聞いてびっくりしましたけど、お似合いです」 「ありがとう。でもお似合いじゃないと思うのよ。だからもう会わない」 「え……」 日菜ちゃんが可愛い目を見開いて私を見た。 「新しいグループのリーダーになったんだし身辺は綺麗にしておかないとダメでしょ。私、アイドル夏目涼のファンだから、絶対彼の足を引っ張りたくないの」 「だからって本当に別れちゃっていいんですか? 陽は、ファンを刺激するような行動をしなければ一般人とは付き合っても大丈夫だって言ってましたよ?」 「でも今の世の中、特別目立つ行動しなくてもすぐ見つかって記事にされるじゃない? 彼はもう31歳だし彼女ぐらいいるでしょって思ってても、実際いるってわかったらファンはショックだよ。それで怒ってくれるならまだいいけど、冷めちゃったらもう戻って来ないでしょ」
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加