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「それはそうでしょうけど……」
納得出来ないって顔で、日菜ちゃんは言葉を濁した。もう1つの理由についても話すべきかな。迷っていたら、日菜ちゃんの方が彼の名前を出した。
「ところで仁は元気ですか?」
「え、あ……元気だよ。日菜ちゃん、後藤くんにはもう電話もしない約束なの?」
「約束はしてないですけど……迷惑でしょう。私達離婚した夫婦ですよ。用もないのに元気ぃ? なんて電話出来ませんよ」
「でも日菜ちゃんと後藤くんは――」
「普通じゃなかったけど夫婦でしたよ。私は妻として夫の彼を愛してました。諦めたけど、まだ好きです」
そうなのかなとは思っていたけれど、はっきり言われてズキンと胸に響いた。
どうしよう、何も言えない。
「陽に会ったらそういうの全部吹き飛ぶかなって思ってたんですけど、ダメでした。だからちょっと待って貰うことにしたんです。お互い仕事に集中しようって言い方しましたけど、多分察してくれたと思います」
日菜ちゃん、そんなに後藤のこと好きだったんだ。
「もし……待っても忘れられなかったらどうするの?」
「どうしましょうね。その時は陽がどうにかしてくれるんじゃないですか。待てなくなったら奪いに行くってウチの弟に宣言してましたから」
おおー。
「そんなに強引にされなくても陽の所に戻れると思いますけどね。まだダメだって思うと同時に、それでもやっぱり私にはこの人だって感じましたから」
そうか、良かったってホッとしてしまった。
「それにわかってますから。仁には私じゃないって」
じゃあ後藤くんは私が貰うねなんて言えないけど、今度は私が頑張ってみたいって気持ちは伝えるべきだと思った。でも言い出せなくて話題がライブに変わった。
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