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自分のことなのによくわからなくて、黙って首を傾げたら更に聞かれた。
「波美ちゃん、俺のこと好き?」
え、私に告白させる気なのって思った。
でも否定するのも勿体ない気がして、迷った挙げ句正直に答えた。
「うん……割と好きかも」
そしたら彼は笑って頷いた。
「そっか。まあでも……俺も割と好きだから、付き合っちゃおうか」
ただしそれには条件があった。
お互い凄く好きってわけじゃないから、どちらかに本当に好きな人が出来たらすぐに別れるって条件だ。だから周りには黙っていようと言われて、ああキープってやつかと思ったけれど、私ももっとタイプの人と出会うかもしれないって夢見てたから、お互い様だと納得してしまった。
で、翌年彼女が入って来た。
「俺、本当に好きな子出来たよ」
そういう約束だったし素直に別れてあげたけれど、傷ついた。
思ったよりは長く続いてたし、もう本当に好きになって貰えたかなって思ってたから。
自分だって、ちゃんと好きになってたわけでもないのに。
それでもやっぱり振られたら傷ついた。
だからもう、ちょっといいかなくらいで付き合うのは止めた。
ましてなんとも思ってない人からアプローチされても丁重にお断りすることにした。
いつか私も本当に好きになった人と真剣にお付き合いするんだって決心して――決心だけして――その後結局誰とも付き合わずに30代になってしまった。
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