11.体だけでいいから

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昨夜車の音聞いて警戒してるのかしら。 なんとなく付き合ってる相手いるって言っちゃったから、彼氏が泊まりに来たと思ってるかな。 「やっぱり私、もう仁とは縁がないんですね」 寂しそうに日菜ちゃんが呟く。 「あの後藤くんと結婚出来たって凄い縁だと思うよ。彼は本来誰とも結婚するつもり無かったみたいだから。それに結婚前提じゃない恋愛なんて相手に悪いから彼女も作る気ないんだって」 「えー、どうしてですか?」 後藤のお母さんの話は出来ないから、質問で返した。 「日菜ちゃんは、何か心当たりない?」 「うーん……深い絶望を抱えてそうだとは感じてましたけど、それが何かはわかりません」 深い絶望か。うん、そういうことだと思う。 日菜ちゃんでも無理だったのに、私ごときにどうこう出来るわけないけれど―― 「日菜ちゃん」「波美さん」 「うん、何?」「あ、どうぞお先に……」 同時に話しかけて譲り合った後、思い切って日菜ちゃんに伝えた。 「実は夏目さんと会わないって決めた理由はもう1つあって……私ね、最近後藤くんのことが凄く気になるの」 「えっ、そうなんですか?」 「うん、あのごめんね、日菜ちゃんにもまだ気持ちが残ってるって聞いたばかり――」 「お願いします!」 いきなり力強く手を握られた! 「仁を幸せにしてあげて下さい。波美さんなら、きっと出来ます。私、何でも協力しますよ」 「本当に……それでいいの?」 「もちろんです。他の誰かだったらちょっと悔しいけど、波美さんは別です。だって私、波美さんも大好きだし、波美さんにも幸せになって欲しいから」 日菜ちゃーん!
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