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「上級で大丈夫でしょ、こっち来たら?」
「いえ、お邪魔になると悪いので……」
どうしよう、もう帰ろうかな。でもあからさますぎると失礼かな。
迷いながら中級を泳いでいたら、また声を掛けられた。
「お姉さん足は綺麗だけど……あ、いやらしい意味じゃなくてフォームね、腕がダメだな。もっと背中から回さないと」
「こうですか?」
素直に指導を受けてたら、別のオジサンも寄って来た。
「いや、見てたけど足首もダメだな。もっと力抜かないと」
指導を口実に体見てるのかなと思ったけど、的外れな助言ではなさそうだし素直に聞き入れたら少し速く泳げるようになった。でも私の横を泳いでいくオジサンはもっと速い。
「昔から水泳やられてるんですか?」
「いや、社会人になってからだけど、もう20年くらいになるかな」
じゃあ私位の年の頃に始めたのかな。それからずっと泳ぎ続けてるって凄いなあと思っていたら、もう1人のオジサンが突然興味深い話を始めた。
「俺もこいつも大したことないよ。あいつ最近来ないな」
「あー、あの喋んない兄ちゃん、しばらく見てないな」
喋らない兄ちゃんですって!?
「その人がどうかしたんですか?」
「来るとずっと泳ぎ続けるんだけど、まあ速い。あれは選手だったんじゃないかな」
「へー、どんな人ですか?」
「うーん、年はお姉さんとあんまり変わらないんじゃないかな。女の方から声掛けても一切なびかない堅物で……ああ、来たよ」
そう言われて思い切り振り返ってしまった。
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