12.付き合おうか

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え、後藤! 隣に立ってる、いつの間に!? 「さっきは良い感じだったのに、俺が知り合いだってバレて誤解された?」 ……はい? 何言ってるの……? 「えっと……何の話?」 「この前言ってたなんとなく付き合ってる人ってさっきの人なんだろ? 妙な誤解されないように知らないふり――」 「全然違うわよ!」 良い感じだった? あのオジサン――うん、どっちと? ってどっちでも一緒だわ! 「私、ああいう男性と釣り合って見えるのね」 「年上で頼もしい方がいいんだろうなって……違うのか?」 「年上過ぎるし、そもそも頼もしい男とか求めてないわ」 「じゃあどんな男を求めてるんだ?」 アンタよ! なんて流石に電車の中では叫べないから何処かに連行しよう。 「ねえ、夕飯食べた?」 「まだだけど……」 「じゃあ何処かで食べて行こう」 「え、でも一条その袋の中……」 「いい、明日食べる」 「消費期限……」 「朝食べれば大丈夫」 自宅最寄り駅で降りて駅前の居酒屋に入った。 あんまり得意じゃないけどお酒が力を貸してくれることに期待して、サワーを注文した。 「乾杯」 あれ? いつもよりスッと喉に入っていく。運動した後だからかな? 後藤は一口だけ飲んで言った。 「一条もあのプールに行くことあるんだな。俺も昔からたまに行ってたけど、初めて会ったな」 へー、昔からね。
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