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「ウチの父親に連れてって貰ったの?」
「うん。一条も?」
「ううん、好きな時に行って自由に泳げるプール自分で探したの」
「そうか……なんかごめん」
「別に謝らなくても……他にどういう所に連れて行って貰ったの? 写真とかない?」
「ああ……ちょっと待って」
川や海の風景写真を想像して待っていたら、出てきたのは魚の写真だった。
「全部後藤くんが釣ったの?」
「うん」
「皆同じ種類の魚?」
「ううん、よく見ると模様が違うよ。これはイワナで、こっちはヤマメ」
へー。でも釣りしないからこれ以上話を広げられない。違う写真ないかなってスクロールしたら、全然違う魚の写真が出てきた。
丸くて小さな魚が、3匹並んで水風船の上に乗っている。
「わ、これ可愛い。これも釣ったの?」
「え? ああ、これは違うよ。水族館」
「何処の水族館?」
後藤が答えたのは、私も知っている水族館の名前だった。私が行った時には展示していなかったか、よく見てなかったのかな。
「ふーん、この子見たいな」
「彼と行って来たら?」
「ああ……この前話した人とは、もう別れたよ」
「え、なんで?」
あなたを好きになっちゃったからって、このタイミングで言うのは違うか。
「言いたくない。まあ色々あったのよ」
「そうだったんだ……ごめん」
「気にしないで。納得して別れたから、もういいの」
そう答えてお酒を飲んだら、後藤は心配そうな顔をしてくれた。
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