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「婚活パーティー主催してる同級生から参加しないかって誘われた」
えー!?
「それで何て……」
「もちろん断ったよ。離婚したばかりだし、悪いけどそんな気になれないって」
「はっきり結婚する気ないとは言わなかったんだ」
「そんなこと言ったら面倒な話になるだろ」
「あー……でもそれだとまた誘われない?」
「そしたらまた断る。そのうち諦めるだろ。一条はそういうの参加しないのか?」
え、自分が断ったパーティーに参加したらどうかって私に勧めてる?
「婚活ねえ。結婚する為に相手を探すって本末転倒な気がするなんて、30過ぎて誰とも結婚出来ずに売れ残ってる女が言ったら笑われるのかな。誰でもいいから文句言わずに余り物どうしで結婚しろって思われてるんだろうね」
「今時売れ残りとか言わないだろ。一条は売り物じゃないし、余り物でもないよ」
後藤の言葉が、胸を包んだ。
どうしてだろう。彼の言葉には絶対に嘘も偽りもないと思える。
「ありがとう、後藤くんにそう言って貰えると――」
「なあ、あれ何だと思う?」
後藤は私ではなく川の中を見ていた。
倒木に段ボールが引っ掛かって揺れていて、茶色い毛のような塊が見え隠れしている。
「鳴き声は聞こえないから……ぬいぐるみ?」
「もし衰弱してる生き物だったら……俺、ちょっと見てくる。失礼」
素早く下を脱いでパンツ1枚になると、後藤は川に入っていった。
幸い深い川ではないようで、慎重に歩いて行く。
よし、後少しで箱に手が届く。
でも安心した瞬間、倒木が揺れて箱から外れた。
箱が川の流れに乗って動き出す。
後藤は急いで手を伸ばしたが、箱に手が触れただけでつかめなかった。
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