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「一条頼む!」
後藤の手に押された箱が、私の方に流れてくる。
川岸から手を伸ばしたけれど届かなくて、思い切って川に一歩踏み入れたら届いた。
「やった、掴んだよ!」
箱を持って岸に戻る。後藤もすぐに岸に上がって来た。
2人で箱の中を覗き込む。小さな毛の塊。後藤がそっと掴み上げる。
「まだ生きてる、一条、病院検索してくれ」
「わかった!」
段ボールの中に入っていたのは子猫だった。もう鳴く力も無いのか死んだように大人しいけれど、一縷の望みをかけて動物病院を探した。
「あった、ここ!」
「よし、行こう!」
後藤は子猫を抱え、私は携帯の地図を見て、私達は病院に向かった。
そして無事動物病院に辿り着いた。
状況を説明すると、受付の女性は後藤に待合室で待つように伝え、私を見て言った。
「お嬢さんはこっちへいらっしゃい」
「え?」
ああ、川に片足突っ込んだんだった!
「すみません、床を汚してしまって――」
「いいのよ、それより早く洗った方がいいわ」
女性はシャワーとタオルを貸してくれて、更に大きすぎて履いていないサンダルがあるからどうぞと言われて、ありがたくいただいてしまった。
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