12.付き合おうか

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サンダルに履き替えて待合室に戻ると後藤の姿はなく、診察室の扉が開いて先生に手招きされた。 「あなたも入って」 今後のことについて、後藤と一緒に説明を受けた。まず最善を尽くすが助かるかどうかはわからないということと、恐らくしばらく入院になるということだ。そして元気になったらどうするのかと問われると、後藤が答えた。 「責任を持って保護してくれる方を探します」 「あなたが飼うのではなくて?」 「動物を飼ったことはないし、独り暮らしで仕事があるので難しいです。確実に世話の出来る方を探します」 後藤がそう答えると、先生は私の方を見て尋ねた。 「あなたも同じ考えですか?」 「そうですね……私も独身で仕事があるので……ああでも、いざとなれば母が猫飼っているのでなんとかなるかと」 「ああ、ご実家で猫を飼われてるんですね」 先生の表情が和らいだ。 実家じゃなくて祖父母の家だし私は全く世話したことないけど……大丈夫、いざとなったら母に頼ろう。 「私も最後まで責任を持ちますから、先生どうかよろしくお願いします」 そして猫を託して病院を出た。 何か変化があったら連絡すると言われたけど、悪い変化が起こらないことを祈りながら。 駅に向かって歩き出した。 後藤は黙っていて、私も黙っていた。黙っているのが気にならないくらい、私の頭の中は拾った猫のことでいっぱいだった。 でも後藤は、別のことを考えていてくれた。
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