12.付き合おうか

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「危ない!」 思い切り滑った。 マズイ、後ろに倒れる! 「悪かったよ。だからちゃんとゆっくり歩いてくれ」 後ろから両肩を支えて、後藤が囁いた。 見上げた先にあったのは、笑顔ではないけれど優しい顔だった。 「ご、ごめんなさい、私あの……変なこと言ってごめん、さっき言ったことは忘れて」 「いや、よく覚えておくよ。そんなつもりじゃなかったけど、これからは気を付ける」 「そんなつもりって?」 「親父さんへの恩はもちろん忘れていないけれど、俺はちゃんと一条を見ているつもりだった」 それはどういう意味……? いやダメだ、また恥ずかしくなって走り出してしまうかもしれないからから追求するのは止めよう。 「あ、それ私の靴……拾ってくれてありがとう」 「いいよ、俺が持つ」 転びそうになって放り投げた私の靴が入った袋。 片方は濡れているから少し重い。後藤はそれを代わりに持ってくれた。 「ありがとう」 答える代わりに、後藤は微かに笑って頷いてくれた。
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