13.その気あるんでしょ

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子猫は絶対に助かる。 そう信じていた私達は、帰りの電車の中でずっと携帯を見ていた。後藤は猫の保護施設を探して、私は子猫の世話について調べた。 そして電車を降りると駅前の蕎麦屋で情報交換しながら食事を済ませ、別々の家に帰ってから、私は母に電話をかけた。 子猫を拾ってしまったと話すと、早速怪しまれた。 『あなたそういうことする子じゃなかったわよね。どうしたの? お隣の夫婦見てたら寂しくなっちゃった?』 ああ、そこから説明か。 ずっと日菜ちゃんを探していた弟が迎えに来て、後藤と日菜ちゃんは離婚することになったけれど、日菜ちゃんは友達の会社に就職して元気にしていると伝えてから本題に入った。 「でね、その猫を見つけたのは後藤くんで、後藤くんはどこか保護施設に連れて行こうと考えてるんだけど、もし見つからなかったらチョビと一緒に飼って貰うっていうのは無理?」 『え、ウチで? 私だって仕事があるし、お婆ちゃんに頼むのも――って、今後藤くんって言った? え? 日菜ちゃんがいなくなっても仁くんと仲良くしてるの?』 「仲良くって程じゃないけど――」 後藤を好きになってアプローチ中って言うのは恥ずかしいので、帰りに電車で一緒になって駅前で食事した時に魚の写真を見せて貰って、その魚を見る為に2人で水族館に行った帰りに子猫を発見したとだけ伝えたのだが、母は俄然興味を持ち始めた。 『2人で水族館ってデートじゃない。へー、波美が仁くんとね……昔お父さんと話したことが現実になるかしら』 「何の話?」 『ほら、お父さん仁くん可愛がってたでしょ? 波美と結婚すれば仁くんはあなたの息子になるわねって』 えー!? 「そ、そういうんじゃないから、後藤くんはそんな気全く――」 『波美にはその気あるんでしょ? だから仁くんと一緒に拾った子猫を手放したくないけれど、自分で育てる自信がないから私に育ててくれってことよね』 うっ、何も言い返せない。全部お見通しか。
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