13.その気あるんでしょ

6/18
前へ
/293ページ
次へ
「そんなに気を遣わないでいいよ。ああそれから、日菜ちゃんの夫だったことも言わないでいいからね」 「ああ……聞かれたら正直に答えるけど、こっちからは言わないよ。夫って言っても肩書きだけで、それすらもうないんだから、日菜が世話になった礼を言う立場じゃない」 普通じゃなかったけど夫婦でしたよ 私は妻として夫の彼を愛してました 日菜ちゃんの言葉が蘇ってきて胸が痛んだ。 後藤にはそういう気持ちが本当に全くなかったのか、押し殺しているだけなのかわからなくて、私には何も言えなかった。 そして次の土曜日、後藤と一緒に車で動物病院に子猫を迎えに行った。 「え、この子でしたっけ?」 「そうですよ。見違えた?」 正直ボロ雑巾みたいだった姿から一変してフワフワで元気な子猫になっていて驚いた。 「良かったなあ……先生、本当にありがとうございます」 後藤も感動してる。とっても嬉しそう。 先生からお話を聞いて、お礼を言って、支払いを済ませてキャリーバッグに入れた子猫を連れて車に戻った。 「本当に良い先生で良かったけど、やっぱり治療費少し払おうか?」 「キャリーバッグ用意して貰っただけで十分だよ。言ったろ、部署変わったって。俺、昇進したから」 おおー、家事だけじゃなくて仕事も出来る男なのね、頼もしい。 「お婆ちゃんちの住所、これで合ってる?」 「うん、大丈夫」 子猫を驚かせないように静かに出発。 安全運転で無事お婆ちゃんち到着。 「あれ、ここオバサンの実家だよね?」 「一条」と書かれた表札を見て、後藤が尋ねた。 ああ、説明していなかった。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加