13.その気あるんでしょ

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「一条って母の姓なの。プロポーズされた時、結婚してもいいけど、自分の名前気に入ってるから変えたくないって言ったんですって」 「へえ……」 車を停めて外に出ると、玄関が開いてお爺ちゃんが迎えに来た。 「いらっしゃい。波美、また大きくなったなあ」 お婆ちゃんも出てきた。 「やーねー、あなたが縮んだんでしょ。波美ちゃん、よく来てくれたねえ」 「お爺ちゃん、お婆ちゃん、久しぶり」 お婆ちゃんは、私に向かってニッコリ微笑んだ顔を後藤に向けた。 「そちらは……」 「はじめまして。波美さんの同級生の――」 「日菜ちゃんの旦那さんだね?」 後藤は驚いて私を見て、私も驚いてお婆ちゃんに尋ねた。 「なんでわかったの?」 「写真見たもの。日菜ちゃんが波美さんの写真ありますよーって探してくれた時にいっぱい出てきてね、とっても優しいんですよって自慢されたわ」 日菜ちゃん、あのカメラここに持って来てたのね。 あの中に後藤の写真もストックされてたのか。 「あー、どっかで見た顔だと思った。日菜ちゃんはどうした?」 うわっ、お爺ちゃんにも気付かれた。 「すみません、彼女とは――」 「そんな所で話してないで、早く入ったら?」 タイミングよく母から声が掛かってキャリーバッグを抱えて玄関へ。部屋に移動する間に母に耳打ちした。 「後藤くんの正体バレた」 「え、もう?」
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