13.その気あるんでしょ

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「日菜ちゃんが写真見せてたみたい」 「あーそうだったの。じゃあ仕方ないわね」 まあ、子猫を見ていれば忘れるだろう。 先住猫とはしばらく隔離した方がいいというので使っていない部屋にケージを用意して貰ったけれど、とりあえず床にバッグを置いて出入り口を開けると、子猫は自分から出て来てミーと鳴いた。 「あら、元気じゃない」 「可愛いねえ」 皆で子猫を囲んで眺めていたら、お婆ちゃんが手を伸ばした。 「テンテンちゃん、おいでー」 テンテンちゃん?  子猫は素直に祖母に抱かれて大人しくしている。 「もう名前決めてたの?」 「ううん、ほらこの子背中に点々って白いところあるでしょ」 ホントだ。茶色の縞模様の背中に、白い丸が並んでる。 「波美ちゃん、名前つける?」 「私は別に……後藤くんは?」 「いや、俺が飼うわけじゃないし……ではテンテンちゃんをよろしくお願いします」 そう答えると、後藤は立ち上がった。 「失礼します。一条はゆっくりしていってくれ」 えー、私を置いて帰る気? 「まだ来たばかりじゃない。仁くんもゆっくりしていってよ」 母も驚いて引き留めた。 「いえ、夕方になると道が混むので。お邪魔しました」 一礼して部屋から出て行く後藤。 私は慌てて追いかけた。
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