13.その気あるんでしょ

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「ねえ、帰るなら私も一緒に行くよ」 「一条が帰ったら皆寂しがるだろ。俺は親戚じゃないし――」 ニャーオ。 チョビが階段から降りてきて、後藤の前に立ちふさがった。 後藤が立ち止まると、チョビは彼の足にすり寄った。 「い、一条これ、どうしたらいい?」 「どうって……後藤くん、猫と遊んだことないの? 猫好きなのよね?」 「好きだけど……あんまり触ったことは……」 そこへ母がやって来た。 「それでよく子猫助けたわねえ。大丈夫よ、チョビは爪立てたりしないから。テンテンちゃんケージに入れたから、会わせてみましょう。仁くん、チョビ連れて来て」 「え、どうすれば……」 「仁くんが来れば勝手についてくるわよ」 後藤は、帰るのを諦めて部屋に戻った。後藤の足に纏わり付きながら部屋に入ったチョビは、すぐに子猫に気付いた。接近して匂いを嗅ぐチョビ。子猫の方も近付いてミーと鳴いたけれど、チョビは鳴かずにケージから離れて、後藤の足元に戻り彼を見上げた。 「チョビ、シャーってやらなくて偉かったね。仁くんに褒めて欲しいんじゃない?」 「え……」 「撫でてあげて」 母に促された後藤が戸惑いつつ手を伸ばすと、チョビは撫でて欲しい場所を勝手にすりつけてきた。 「すっかり気に入られたわね。じゃあ私がこの子を見てるから、波美と仁くんはあっちの部屋でチョビと遊んであげて。新しい子を受け入れた時には先住猫にいっぱい愛情注いであげないといけないのよ」 その通りと言うようにチョビがニャーンと鳴くと後藤の顔から戸惑いが消えて、一緒にリビングに移動した。そしてしばらくチョビと遊んでいると、お婆ちゃんに呼ばれた。 「波美、こっちきてお茶入れるの手伝って。仁くんはソファでチョビと待っててね」 後藤がソファに腰を下ろすと、チョビは彼の膝の上で丸くなった。私はお婆ちゃんがいるキッチンへ。2人きりになった所で、小声で話しかけた。
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