13.その気あるんでしょ

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「いや、説明するよ」 間に入ろうとした私を遮って、後藤は日菜ちゃんとの出会いから別れまでの話をした。それを黙って聞いた後、お爺ちゃんは言った。 「それは家族にきちんと説明して許して貰えばいいだけの話じゃないのか? 日菜ちゃん、あんたのこと愛してたよ?」 「それは勘違いですよ」 「勘違いはあんたの方じゃないか?」 すると後藤は、相変わらず膝の上で寝ているチョビを撫でながら呟くように答えた。 「だとすれば……俺は日菜に酷い仕打ちをしたのでしょうか」 そんなことないよと言ってあげるべきか考えている間に、お婆ちゃんが答えてくれた。 「まだ離婚したばかりでしょう? 正しかったかどうかなんて、ずっと後にならなきゃわからないわよ。後悔してるなら引き返せばいいけれど、そうじゃないんでしょう? だったら今はただ日菜ちゃんの幸せを祈って、自分も幸せになりなさい」 後藤は答えなかった。 黙ったまま俯いていた。 自分も幸せになっていいとは思えない。 そもそも自分が幸せになんてなれるわけがない。 そんな風に考えているように見えて抱き締めたい気持ちに耐えていると、母が言った。 「あらチョビ、すっかり寝ちゃったわね。重いでしょう。波美、そこの猫ベッドに移動してあげて」 え、私が? 「あ、じゃあ……失礼します」 うっ、ほんとうに重いわね、チョビ。 チョビの体の下に手を入れると、必然的に後藤の太股に触れてしまう。 チョビが柔らかいせいか、硬く感じてドキドキする。 「2人とも手を洗ってこっちに来て。お茶にしましょう」
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