13.その気あるんでしょ

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手を洗って戻ってくると、お爺ちゃんは後藤に隣に座るよう促した。 「ところで、あんた波美のことはどう思ってるんだ?」 ちょっ、お爺ちゃん! 私は焦ったけれど、後藤は冷静に答えた。 「とても感謝しています。波美さんがいなかったら日菜は――」 「そうじゃない、とぼける気か? ああ、お茶じゃダメだな。後でじっくり男同士で話そう。今夜はここに泊まっていきなさい」 「ちょっと、お爺ちゃんそんな――」 「俺はいいですよ。皆さんがよろしいのなら」 マジか! 「よし、じゃあ酒買いに行こう。えっと名前なんだっけ?」 「後藤仁です」 「仁、行くぞ、ついて来い」 「はい」 あらら、2人仲良く出掛けちゃった。 「じゃあ私達は夕飯の支度ね。波美達も食べて行くだろうと思って、食材は沢山揃えてあるのよ」 やったー、久しぶりの母の手料理! 食べるだけじゃなくて、ちゃんと作り方も覚えなきゃ。 私も一生懸命手伝って、彼等が戻って来た時にはテーブルいっぱいに料理が並んでいた。 少し心配だったけど、食事の間は日菜ちゃんや私と後藤が話題になることはなく、お爺ちゃんと後藤が行って来た近所に出来たショッピングモールの話や猫の話しかしなかった。 「チョビはなんでチョビって名前なんですか?」 「よーく見ると、鼻の下が少し黒いでしょ。あらチョビ髭生えてるのねって」 「へー、見てきていいですか?」 「どうぞ」 箸を置いて立ち上がると、後藤は寝ているチョビに近付き確認してきて報告した。 「チョビ髭ありました。可愛いです」 おー、いい笑顔。
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