13.その気あるんでしょ

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なんてことを考えていたら、母達を押しのけるようにハゲ親父の顔が浮かんで来た。 「ねえ後藤くん、この前あなたに、父のことばかりで私を見てくれないって言ったけど、あれ違うかも。私が、後藤くんといると父を思い出してしまうのよ」 そう伝えたら、後藤はしばらく考えてから尋ねた。 「それは……辛いってこと?」 「そうじゃない、そうじゃなくて……考えてしまうの。多分父が胸に秘めていた思いがずっとグルグル胸の中で渦巻いて、吐き出したくなってしまうの。そんなことを言ったら、色んな人……後藤くんさえ傷つけてしまうかもしれないから言えなかった言葉よ」 それはどんな言葉かと聞いてくれることを期待したけれど、後藤は黙っていた。 そしてそのまま後藤の家の前に到着した。 「運転ありがとう。後は俺がやるから降りて――」 「俺の家族にならないか?」 ついに口から飛び出してしまった言葉に、後藤は目を見開いた。 「……おじさん?」 あ、いや、口調真似ただけで父の霊が乗り移ったとかじゃないけど――参ったな、なんて可愛い顔するの。 でもダメだ。 ちゃんと自分の言葉で、自分の気持ちとして伝えなきゃ。 「お隣の仲良しさんでいいじゃないかって自分を誤魔化してきたけれど、本当は私……あなたと家族になりたいの。そうした方がもっと色んな事が出来るって、日菜ちゃんと入籍してた後藤くんならわかるでしょ?」 うわっ、言ってしまった! どうしよう、心臓バクバクする。 「ごめん、伝えたかっただけだから、無理ならこれからも――」 「一条、今度の土日空いてる?」 ――え?
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