14.先に出て待ってる

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「後藤くんが料理上手なのってお父さんの影響だったのね。昔から料理の仕事をなさってたの?」 「いや、仕事としてはここに来てからだよ」 妻が病気になって以来お父さんが料理をしていて、息子に遺伝があったとしても発病させないため、そして自分が病気の妻に先立たない為に、栄養についても学んでいたらしい。 「どんな病気にも一番の予防は規則正しい生活だから、食事と就寝時間は本当に煩く注意された」 それで後藤はこんなにきちんとしてるのか。日菜ちゃんが復活出来たのも、その生活スタイルのお陰かもしれないけど……私今更そんな生活出来るかなあ。 そんな心配をしていたら、ドアがノックされて後藤が立ち上がった。 もうランチタイムが終わったのかと思ったら、開いた扉の先にいたのは老夫婦だった。 「仁くん、久しぶり」 「ご無沙汰しております」 ペンションのオーナーの大叔父さん夫婦だ。 「あのはじめまして、私……」 慌てて挨拶を始めてから、なんと自己紹介すればいいのか考えていると、後藤が言った。 「結婚を考えている女性で、一条波美さんです」 「そうなんですってね、よくいらしてくれました」 「い、いえ、突然ですみません」 そして一通り挨拶が済むと大叔父さんは仕事に戻り、大叔母さんが後藤に尋ねた。 「お母さんに会いに行く?」 後藤は私と目を合わせた。私が頷くと、大叔母さんは私達をペンションの離れにある陶芸工房に案内してくれた。 「こんにちは」 中にいたご婦人が挨拶してくれて、一瞬彼女が後藤のお母さんかと思ってしまったが、後藤は工房の奥に座って絵付けをしている女性を見ながら言った。
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