14.先に出て待ってる

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「母と同じ病気になったら、俺も奇妙な妄想に取り憑かれるかもしれない。そう考えたら、怖くない?」 だから俺なんてやめておけ。 そう言いたいのよね。 だけど私は―― 「うん、怖いね。でも私は、そうなった時に後藤くんが独りだったらって考える方が怖いよ」 黙って目を見開いた後藤に、私は続けた。 「後藤くん、知ってるでしょ。私には頼りになる家族がいる。友達もいる。私の家族になったら、その人達が後藤くんの味方になってくれる。後藤くんの家族だけで乗り越えるのが大変なことも、皆の助けを借りればきっと乗り越えられる。そう思わない?」 後藤はまだ黙っている。 「それとも他に私と一緒になれない理由があるの? 単純に私を女として見れないとか……」 言ってしまった。 それが本当の理由だったらどうしよう。 「あーごめん、いいよ、答えなくて。あ、私夕飯の前にお風呂入って来ようかな」 「風呂ならそこにあるだろ」 後藤、しゃべった。そして歩いて、部屋の奥の扉を開いた。 「一条こそ、俺を男として見れるのか? 単に可哀想な隣人だと思ってるんじゃなくて?」 扉の向こうに、露天風呂。 後藤は私を見詰めながら服を脱ぎはじめた。 プールで見たから知ってたけど、脱いだら凄いタイプの細マッチョ。 恥じらうのを忘れてじっと見てしまったら最後の1枚を脱ぐ時には背を向けて、彼はそのまま露天風呂に入って行った。 扉は開いたまま。 つまり……来いよってこと?
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