14.先に出て待ってる

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後藤が背中を向けて湯船に入るのを待って、裸になった。 露天風呂のあるベランダに入ってドアを閉めても後藤は振り向かない。 体を洗って、ドキドキしながら湯船の中へ。 後藤はまだこっちを見ない。 「わあ、いい景色だね」 返事なし。 「あー、気持ち良い」 思わせぶりに呟いて、人に褒められる脚を伸ばしてみる。 うーん、これにも釣られないか。 と思ったら、後藤が立ち上がった。 え、嘘、不愉快だった……? 雫を落としながら去って行く後藤の足を目で追いかける。 それが止まって、バスタオルに包まれた。 「あ……後藤くん――」 「先に出て待ってる」 やっと私を見てくれた。 良かった、怒った顔じゃない。 少し頬が上気して艶っぽい顔。 こ、これは……誘われてるのよね? どうしよう。 すぐに追いかけたらやる気満々みたいだし――まあ実際満々なわけだけど――もたもたしてたら後藤のやる気が失せるかも。 ――でもちょっとは焦らすべき? ああもうわかんない!
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