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「違うの。これは以前ファンだった方の服で、その方はもう結婚してすっかり女性になってしまって……」
幻滅したから、思い出の品を手放したいと。でもいいのかなって戸惑ってたら、あっちゃんに言われた。
「高い服は私が売り払ったから、ここに入ってるのはそうでもないやつ。気にしないで持ってっていいよ」
そうでもないって言ってもあっちゃんちの金銭感覚だと高そうだけど、考えてみたらこの髪型に合う服持ってないし、貰ってしまった。
いきなり全身それでコーディネートはやりすぎかと思って、翌日はその中にあったシルエットの美しいパンツに手持ちのトップスを合わせて、あっちゃんママにして貰ったメイクを控えめに真似して出社した。
そしたら、同僚に言われた。
「誰かと思った。髪切ったんだ。化粧も変えた? え、何、恋?」
髪切ったのに失恋したとは言われないのか。まあ恋してたようには見えてなかったよね。
「いえ、美容師の同級生に切ってあげるって言われて……」
「へー、この方が似合うよ。化粧も教えて貰ったの?」
「ええ、まあ……」
彼女は同じ部署の先輩で、去年結婚した田中さん。面倒見がよくて気さくな人なので、私は思いきって彼女に聞いてみた。
「この前久しぶりに中学の同級生と会ったんですけど――」
2人は人妻で、1人はバツイチだった。そして人妻に婚期を逃した人認定されたと説明した後、彼女に質問した。
「でも東京の初婚平均年齢って30歳ですよね? 私まだ31――」
「ああ、それ違うよ」
えっ……違うの……?
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